インタビュー

駒沢に400年以上根付く地主<眞井家>に聞く、駒沢のまちのこと。20代続く家系図【前編】

駒沢大学駅周辺の喧騒から離れた、静かな住宅街に建ち並ぶ「ガーデンテラス駒沢」をご存知でしょうか。敷地に足を踏み入れると、色とりどりの緑が生い茂っていて、どこか異国のまちのような雰囲気がただよっている場所です。実はここ、1500年代から駒沢に根付く地主である、眞井家の土地にある賃貸物件なのです。

眞井家は他にも駒沢交差点の角地の3つのビルのテナント部を持っていたりと、駒沢の変遷を土地とともに見守ってきました。そんな眞井家はの目には駒沢はどう映っているのか。今回は代々不動産賃貸業を営んでいるサナイコーポレーションの代表取締役である眞井斎壽さんに、昔の駒沢や家業のお話を中心にお伺いしました。

駒沢の地主の19代目として生まれて

ーーまずは眞井さんについて教えてください。

眞井 昭和38年1963年に生まれて、今年で61歳です。去年還暦を迎えました。生まれてからずっと駒沢で、コドモの園幼稚園、駒沢小学校と通って、それ以降は私立に行きました。大学院卒業まで駒沢に住んでいたんですが、就職したメーカーでは主に地方の工場勤務だったんですよ。30年間のサラリーマン生活のうち、20年近くは茨城の工場勤務でした。

ーーいちど駒沢を離れているんですね。

眞井 その間ほとんど駒沢には帰っていませんでしたが、2017年に父が大病して、翌年の9月に55歳で早期退職をして駒沢に戻ってきました。それまで家業にまったく携わっていなかったんですけど、いまは不動産賃貸業を継いでやっています。

眞井斎壽(さないなりとし)さん。株式会社サナイコーポレーション代表取締役。ガーデンテラス駒沢内にある本社会議室でお話を伺った。

ーーメーカーに勤務される前から、ゆくゆくは家業を継ごうと決めてたんですか?

眞井 そうですね。なので一応準備はしていました。メーカーでは最初技術屋だったので、途中でキャリア変更して企画や管理系に移ったり。それから宅建士と簿記の資格を取ったり、小さなアパートを1棟持っていたので、その管理をしたり。あとたまたま妻の実家がアパートとマンションを持ってたので、そのリノベーションを手掛けました。ずいぶん経験を積ませてもらいました。

ーーお勤めしながら並行して資格も取られて、すごいですね。

眞井 なんかね、10年くらい前から世の中のサラリーマンに大家さんブームが始まったんですよ。不動産投資系の勉強会にも行き始めて。僕は自分で不動産を買った経験がほとんどなかったんですけど、周りはイチから土地やアパートを金融機関から借り入れて、買っていて刺激を受けました。

サナイコーポレーションが所有している駒沢の土地。

ーーいちど駒沢の外に出て、不動産業以外の職に就いたのは、家庭の方針としてあったのでしょうか?

眞井 やっぱり最初から家の仕事に就いちゃうと、外の世界を知らないままになるじゃないですか。父もそうだったんですよ。父もメーカー勤務で、実は僕と大学も学部も、学科まで一緒なんです。

ーーすごい。何か影響されるようなきっかけがあったんですか?

眞井 メーカー勤務の父の姿も知ってますし、セールスエンジニアで営業系だったんですけど、そういう血なんですかね。好みが割と近かったのかもしれません。

ーーお父さんの背中をみて育ったのかもしれないですね。

1500年代から20代続く家系図

眞井 これは眞井家の家系図です。初代が1500年代で、小田原の北条が豊臣秀吉に攻められたときに逃げてきて駒沢に土着したと、そんな経緯が家系図の冒頭に書いてあります。4代目は名前が残ってなくて「某」になっていますね。僕が知ってるのは17代目の祖父からです。僕が19代目で、16歳の息子で20代目になります。この先は繋がるかどうかわかりませんけど、息子にもいちどは外の世界をみてほしいです。

眞井家に存在するいちばん古い写真。明治44年1911年頃、祖父である壽一さんの七五三詣を写した一枚。

ーー家系図がちゃんと繋がってるのはすごいですね。

眞井 私の祖父から先はまだ書き足してないので、誰かが書き足さなきゃいけないんですが。先にデータとしてエクセルで書き起こしてみると、いろんな分析ができました。

ーー息子さんは16歳で、これからちょうど進路を考える時期ですね。ご本人は何か意識していたり、眞井さんから声をかけられていることはありますか?

眞井 僕は大家に向けたセミナーでも、よく「楽しく賃貸経営しましょう」と言っています。そうしないと、子どもたちは「なんか大変そうだな」と継ぎたくなくなってしまいます。そういう気持ちにならないように、自分の特技を生かしてこんな工夫してるとか、満室になったとか、そんなことはよく家でも話をして興味を持ってくれるよう勧めてますね。

ーー眞井さんのおっしゃる「楽しい」とはどういうことですか?

眞井 自分のアイディアをいろいろ取り入れたり、いろんな最新の情報を入手して、賃貸経営の中に取り込んでいくことですね。そういう目的のために大家さんの勉強会にもよく行って、いろんな考え方や経営スタイルを見たり聞いたりしてますね。

ーー柔軟にいろんな方の意見ややり方を取り入れてらっしゃるんですね。

眞井 もともとメーカーに勤めてたので、トヨタ式でよく言われるカイゼン活動が身についているんですね。ときには失敗しますけど、しっかり計画を立ててカイゼンしていくようにしています。我々は住居をメインに取り扱っていますが、昔はメンテナンスに手を抜いて、だんだん賃料が下がっていった時期があるんですよ。そうすると入居する方のクレームも多くなって大変でした。いまはなるべく綺麗にして、管理会社の方に清掃をしっかり毎日やってもらってますね。

ーー確かに、ちゃんと掃除してされていて、建物が綺麗に保たれているのは、住む人にとっては嬉しいことですよね。

【後編へ続く】

photographer :Wakana Baba
text:Lee Senmi

KOMAZAWA
COMOREVI
PROJECT_.
駒沢こもれびプロジェクト