【駒澤大学 春のオープンキャンパス】3月15日(土)、16(日)に開催!授業体験、学食。大学生に近づくチャンス!
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深沢の閑静な住宅街を歩いていると現れる「SAMURAI STUDIO 深沢アトリエ」。ここは駒沢エリアの子どもたちが通っている、子どものための美術教室です。佇まいから特別であたたかみのある雰囲気を漂わせる教室では、絵や工作がうまくなるように技術を教えるのではなく、大人になってからも自分の味方になってくれるようなアイデアの考え方や創造性を育んでいました。今回は生まれも育ちも駒沢公園からほど近い深沢だという、「SAMURAI STUDIO 深沢アトリエ」主宰の南澤孝見さんに、子どもが美術に触れる重要性を中心にいろんなお話を伺いました。
ーー美術教室を始めたきっかけを教えてください。
南澤 うちの子どもが3歳のときにこの場所を借りて、せっかくだから絵を教えようと思って。ついでに他の子にも教えたらいいんじゃないかと、美術教室を始めました。教えてるうちに面白くなったのもありましたし、子どもの美術も好きなもんですから、これまで10年以上やっています。
ーーお子さんは、いま何歳ですか?
南澤 中学1年生で、深沢中学校に通っています。なので、新たに中高生を対象にした学生クラスも作りました。全部うちの子の成長とともに教室が続いています。
ーー教室ではどんなものを作っているのでしょうか?
南澤 基本的には平面と立体ですね。とにかくいろんな素材を使って、ひと月かけてひとつの作品を作っています。お菓子の家を作ってみたり、楽器を発明して自分たちで曲を作って演奏するバンドを作ったりなど、「これも美術なの!?」という素材やテーマで幅広くやってます。この前はフェルトで作品を作って裁縫教室みたいになってました(笑)。僕よりうまい子も出てきたりして。
ーー楽器も作るんですね! どういう楽器が生まれたのか気になります。
南澤 謎の笛や太鼓から、謎のギターまで。楽器を作るのはすごく面白かったですよ。結局、楽器には「打撃音」と「連続音」の2種類しかないんだということに気づいて、楽器のいろんな可能性が広がりました。ピーっと引っ掻いたら出る音は連続音で、叩いて出る音は打撃音。ピアノも打撃音ですよね。
ハーディ・ガーディという連続音も打撃音も出せる楽器があるんですけど、それが流行りました。楽器をひとつでも演奏できるようになると、人生が楽しくなりますよね。初めて会った人とも言葉が通じない人とも、すぐ一緒にセッションできるじゃないですか。
ーー美術教室と聞いたときに思い浮かぶような、絵や工作物だけを作っているのではないんですね。
南澤 技術的なものを教えるよりも、アイデアを開いていくために、毎回なるべく異なるテーマと素材を与えています。要は、何かを与えられたときに「ここまで可能性を広げられるんだ!」ということに子どものうちから気づいて、自分なりに回答を出すことが大切なので。小さい頃からそういう訓練をしていると、どんな課題が降りかかっても、いろいろなアイデアを出せるようになります。テーマに対してすごく面白がる子もいますし、拒否反応を示す子もいますが、こんな形の美術教室はあまりないので、やりがいがありますね。
ーー拒否反応を起こしちゃう子に対しては、どんなふうに対応されているんでしょうか?
南澤 こちらから働きかけることは特にしません。やっぱり言われて気付くものじゃないと思うので、周りがやっている様子を見ながら「こういう手もあるんだな」と、その子自身が気づいて学んでいくしかないですね。だから人数がいるのは大事ですよ。いろんな子から学ぶことができるので。
ーー子どもたちみんなで学び合ってるんですね。教室に通われてる子は長いですか?
南澤 10年くらいやっていますけど、続けてる子は続けています。受験をする子は途中で辞めちゃうんですけど。受験よりも美術教室の方がいいと思うんですけどね(笑)。
ーー美術教室以外では、どんなお仕事をされているんでしょうか?
南澤 メインの仕事はアートディレクションや建築のデザインををすることが多くて、音楽イベントのプロデュースまで幅広くやってます。南の島の宿泊施設を作ったりと、特殊な遊び場を作ることが多いですね。自分が遊んでいないと、人を遊ばせることはできないので、子どもたちにもなるべく遊んでほしいなと思っています。何かを与えられたときに、みんな真面目に答えすぎるんで。もっと遊んでいいんだということを、子どものうちからやることが大切です。大人になってからいきなり「自由にやって」と言われてもできないので。
ーーその考え方が教室にも反映されてるんですね。
南澤 現代社会は二元論にとらわれて、なんでも区別しすぎるじゃないですか。例えば、すごく忙しいという人は、自分のやっていることを別々のプロジェクトだと考えているからなんですよね。物事を分けてしまうから疲れるんです。すべてのことが繋がっていると思えば、疲れないはずなんですよ。
ーーライスワークも、ライフワークも区別がないということでしょうか。
南澤 僕は趣味も仕事も全部一緒です。建築やイベントプロデュースなんて、美術から音楽まで全部突っ込めますからね。この教室で美術に触れているうちに、そういうことに気づいてほしいなと思ってます。
ーーゆくゆくは美術で生きていくのではない子どもたちにも、必要なことですね。
南澤 そうですね。銀行員になるような人に、ぜひ来てほしいんですけどね。美術が好きな人は勝手に自分でやるので。一般的な世界に入ったときに、美術を通して培った考え方を応用してほしいです。
ーー子どもたちの作品で、こういうものが面白い!と思うものはありますか?
南澤 全部すごく面白いです。小学3年生くらいまでは、考えていないし勢いがすごいので、大人なんて全然敵わないです。子どもは大人の予備軍だと思ってる人が多いですけど、全然違うんですよ。子どもは、褒められようとか思っていないので、すごいんです。だんだん褒められようとして、正解を求めて作ると、急激につまらなくなるんですけど。大人もそうですけど、やっぱり無心で作るものが圧倒的に面白いです。
ーー南沢さんが深沢で美術教室をしているのは、何か理由があるんでしょうか?
南澤 単純に深沢5丁目で生まれ育って、いまは深沢6丁目に住んでいるだけです。深沢は好きですね。等々力までも自由が丘までも全部駅が遠いから、陸の孤島みたいで居心地が良いです。あとは、駒沢公園が近くにあるのがやっぱり大事な要素ですね。
ーーこれまで、どんな人生を歩んできたのでしょうか?
南澤 父が商社に勤めていて、1950年代にニューヨークからダイヤモンドを輸入する仕事をやっていたところ、独立して日本で初めてダイヤモンドの個人輸入を始めたんです。ちょうどその頃に深沢に家を建てて、僕はそこで育ちました。会社はニューヨークにもあったので、家では常に英語が飛び交うという変な家庭でした。
高校まで私立の付属校に通っていたので、近所に友達がいなくて、公園では1人で遊んでいました。映画をずっと撮っていたので、初めは多摩美術大学のグラフィックデザイン科に入学しました。当時は映画を学べる学科はなかったんですが、絵が得意だったし入ろうかなと。そのあとは東京藝術大学の工芸科に入り直して、建築にもだんだん興味が出てきたのでイタリアの大学院で建築を学んで、いまは建築の仕事を主にやっていますね。
ーー映画は高校生のときに撮っていたんですか?
南澤 中学生のときです。中学1年生の頃にアニメを作っていて、1日に何枚かけるかが勝負なので、ずっと深沢公民館に篭って描いてました。だけど大変すぎるから実写で撮ろうと、映画を2本撮りましたね。中学生が撮った映画はめずらしいみたいで、最近もミニシアターで上映されていました。改めて観返すと、いまと考えてることは一緒だったりして面白いです。当時は、お小遣いを全部フィルムを買うことに使っていました。現像すると何も写ってないこともあって、また撮り直したり。
ーー南澤さんのコアとなる考え方は、どういうふうに形づくられたんでしょうか?
南澤 小学校から高校までずっと付属校だったので、あんまり勉強をしなかったんですよね。その流れで、どうやったら遊んで生きていけるかをずっと考えてました。それだけです(笑)。
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美術教室内には子どもたちの作品が所狭しと並べられていて、その場にいるだけで創造性を刺激されるような空間でした。「いつでも遊びにきてください!」と、南澤さん。気になる方はぜひ一度訪ねてみてはいかがでしょうか。
SAMURAI STUDIO 深沢アトリエ
住所:〒158-0081 東京都世田谷区深沢6-21-23
開講クラス:
・幼児クラス (3歳~6歳)
水曜日クラス 2:30 ~ 4:00
・小学生クラス (小学生全般)*5~6歳児も参加可能
月曜日クラス 4:30 ~ 6:00/火曜日クラス 4:30 ~ 6:00/水曜日クラス 4:30 ~ 6:00
・学生クラス(中高生)
水曜日 18:30 〜 20:00
ウェブサイト:https://fukasawa-atelier.com/
お問い合わせ:TEL:03-3704-4414
text:Lee senmi